結果的加重犯の共同正犯の成立が認められることを前提に,次の【事例】及び各【見解】に関する後記1から5までの各【記述】を検討し,誤っているものを2個選びなさい。
【事例】
甲と乙は,丙に対する傷害を共謀し,共同して木刀で丙の手足を殴打していた際,甲は丙に対する殺意を抱き,木刀で丙の頭部を殴打し,丙はその殴打により脳挫傷で死亡した。なお,乙は,甲が殺意を抱いたことを知らなかった。
【見解】
A説:共同正犯とは,数人が犯罪に至る行為過程を含めた行為を共同することであり,特定の犯罪を共同して実現する場合はもちろんのこと,単なる行為を共同して各自の意図する犯罪を実現する場合も,それぞれの行為について共同正犯の成立を認める。
B説:共同正犯とは,数人の者が共同して特定の犯罪を行うことであり,構成要件の間に重なり合いがあれば,そのうちのより重い犯罪について共同正犯の成立を認め,軽い犯罪の故意しかない者には,軽い犯罪の刑を科す。
C説:共同正犯とは,数人の者が共同して特定の犯罪を行うことであり,構成要件の重なり合う限度で軽い犯罪の共同正犯の成立を認める。
【記述】
1.A説からは,甲と乙に殺人罪の共同正犯が成立するとの結論が導かれる。
2.B説からは,甲と乙に殺人罪の共同正犯が成立するとの結論が導かれる。
3.B説に対しては,犯罪の成立と科刑が分離するのは妥当でないと批判できる。
4.C説からは,甲と乙に傷害致死罪の共同正犯が成立し,甲には殺人罪の単独犯が成立するとの結論が導かれる。
5.C説に対しては,A説やB説から,共同正犯の成立範囲が広すぎると批判できる。
「平成27年 短答式試験 刑法」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/001144533.pdf)をもとに作成