刑法第65条に関する次のⅠないしⅢの各【見解】についての後記1から5までの各【記述】のうち,誤っているものはどれか。
【見解】
Ⅰ.刑法第65条第1項は真正身分犯の成立及び科刑についての規定であり,同条第2項は不真正身分犯の成立及び科刑についての規定である。
Ⅱ.刑法第65条第1項は身分が違法性に関係する場合についての規定であり,同条第2項は身分が責任に関係する場合についての規定である。
Ⅲ.刑法第65条第1項は真正身分犯・不真正身分犯を通じて共犯の成立についての規定であり,同条第2項は不真正身分犯の科刑についての規定である。
【記述】
1.Ⅰの見解に対しては,真正身分犯が身分を連帯的に作用させ,不真正身分犯が身分を個別的に作用させることの実質的根拠が明らかでないとの批判がある。
2.Ⅱの見解に対しては,身分が違法性に関係する場合と身分が責任に関係する場合を区別することは困難であるとの批判がある。
3.Ⅲの見解は,刑法第65条第1項が「共犯とする」と規定し,同条第2項が「通常の刑を科する」と規定していることを根拠の一つとしている。
4.Ⅰの見解に立った場合,甲が愛人である乙を唆して,乙が介護していた乙の老母の生存に必要な保護をやめさせた事例では,甲には保護責任者遺棄罪の教唆犯が成立し,科刑は単純遺棄罪の刑となる。
5.Ⅲの見解に立ちつつ,常習賭博罪における常習性が身分に含まれると解した場合,賭博の非常習者である甲が賭博の常習者乙を唆して,乙に賭博をさせた事例では,甲には常習賭博罪の教唆犯が成立し,科刑は単純賭博罪の刑となる。
「平成25年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000111056.pdf)をもとに作成