次のⅠ及びⅡの【見解】は,刑事訴訟法第220条第1項第2号及び同条第3項において,被疑者を逮捕する場合において必要があるときは,「逮捕の現場」で令状を必要とせずに捜索・差押えをすることができるとされている根拠に関する考え方を述べたものである。これらの【見解】のいずれかを前提に,後記アからオまでの【記述】のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【見解】
Ⅰ.逮捕の現場には証拠の存在する蓋然性が一般的に高いため,裁判官による事前の令状審査を行う必要性がない。
Ⅱ.逮捕の際には被逮捕者により証拠が隠滅されるおそれが高いため,これを防止して証拠を保全する緊急の必要性がある。
【記述】
ア.Ⅰの考え方に立つと,「逮捕の現場」は,令状が発付されたとしたら捜索が可能である範囲,すなわち,逮捕の場所と同一の管理権が及ぶ範囲内の場所と考えられる。
イ.Ⅰの考え方に立っても,捜索・差押えの対象は,逮捕の理由とされた被疑事実に関する証拠物に限られる。
ウ.Ⅰの考え方に立つと,被逮捕者の身体を捜索する場合,被逮捕者を逮捕した現場で直ちに捜索を実施することが適当でないときであっても,捜索の実施に適する最寄りの場所まで連行して捜索することはできない。
エ.Ⅱの考え方に立つと,「逮捕の現場」は,被逮捕者が証拠を隠滅することが可能である被逮捕者の手が届くなどの事実的支配が及ぶ範囲内の場所と考えられる。
オ.Ⅱの考え方に立っても,被逮捕者をその住居で逮捕してから警察署まで連行した上,その後に逮捕の現場として同住居を捜索することができる。
1.ア イ
2.ア ウ
3.イ エ
4.ウ オ
5.エ オ
「平成22年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000046903.pdf)をもとに作成