次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1. 甲は,丁寧に手入れがなされていたVの長髪を,同人が寝ている間に無断で切って短くした。甲には傷害罪が成立する。
2. 甲が,Vを多数回にわたって手拳で殴打したり足蹴にしたりする暴行を加え,その場を立ち去った直後,偶然通り掛かった乙が,倒れているVに対し,更に手拳で殴打したり足蹴にしたりする暴行を加えた。これらの暴行による傷害によってVは死亡したが,その死因となった傷害が,甲乙いずれの暴行によって生じたものであるか判明しなかった。この場合,甲乙それぞれに傷害罪が成立するにとどまる。
3. 甲は,傷害を負わせる意思なくVの顔面を手拳で殴打したが,甲の意に反して当該殴打によってVが傷害を負った場合,甲には傷害罪は成立しない。
4. 甲は,Vに精神的ストレスを与えて精神に障害を生じさせようと考え,1か月間にわたり,1時間おきにVに無言電話をかけ続けた。Vに何ら精神の障害が生じなかった場合,甲には暴行罪が成立する。
5. 甲は,Vに下痢の症状を起こさせようと考え,腐敗した食品を食べさせたところ,Vは,これによって下痢の症状を起こしたが,数時間安静にするうちに完治した。甲には傷害罪が成立する。
「平成20年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006413.pdf)をもとに作成