司法試験短答式試験過去問題一問一答

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平成20年 刑事系科目

第13問 (配点: 3)


学生A,Bは,不能犯の成否の判断基準に関する次のⅠ,Ⅱの【見解】のいずれかを採って後記【事例】について後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑦までの( )内から適切な語句を選んだ場合,後記1から5までのうち誤りを含むものはどれか。

【見解】

Ⅰ. 行為当時に一般人が認識し得た事情を基礎とし,一般人を基準に結果発生の具体的危険性があるか否かの判断による。

Ⅱ. 行為当時に存在したすべての客観的事情を基礎とし,結果発生の具体的危険性があるか否かの判断による。

【事例】

甲は,健康な乙を毒殺するため,薬品棚から取り出した毒薬のラベルが付いた容器に入った粉を毒薬と認識してその水溶液を乙に多量に注射したが,同粉は,ラベルに表示された毒薬ではなくブドウ糖であったため乙は死亡しなかった。

【会話】

A. 私は,甲の罪責については,①(a. 毒薬・b. ブドウ糖)の水溶液を注射する行為が危険であるかどうかを判断し,甲には殺人未遂罪が成立②(c. する・d. しない)と考える。

B. しかし,A君の見解だと,特定の食物の摂取によりショック死しかねないアレルギー体質を有する乙を,そのことを知った甲が,当該食物を乙に食べさせて殺害しようとした事案で,一般人が乙の体質を認識し得なかった場合には,③(e. 行為当時に存在した全事情を基礎として・f. 行為当時に一般人が認識し得た事情を基礎として)判断することになるから,未遂犯が成立しないこととなり,常識に反する。

A. そのような場合,私の立場でも,④(g. 行為時に行為者が特に認識していた事情・h. 事後的に明らかになった全事情)を考慮すべきと考えるので,B君の言う事案でも未遂犯の成立を認めることができる。
それよりも,B君の立場を理論的に徹底すれば,結果が不発生に終わった事案は,ほとんど常に⑤(i. 不能犯・j. 未遂犯)となってしまうのではないか。

B. いや,私の立場であっても,事後的・科学的見地から,実際に存在した事実のほかにどのような事実があれば結果が発生し得たかを検討し,そのような事実が行為時に存在し得る可能性の程度を危険判断に取り込むべきと考える。したがって,前記【事例】でも,単に,⑥(k.ブドウ糖・l. 毒薬)を健康な乙に注射することの危険性を判断するのではなく,毒薬のラベルの付いた容器内にブドウ糖が入っていた原因・経緯なども考慮すべきだ。例えば,その原因・経緯が極めてまれで異常だったという事情は,不能犯を⑦(m. 肯定・n. 否定)する方向に働くと考える。

1. ①a,②c
2. ③f
3. ④g,⑤i
4. ⑥k
5. ⑦m

「平成20年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006413.pdf)をもとに作成

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