次の【事例】における【Wの証人尋問】中の(ア)から(エ)までの下線部分にそれぞれ対応する後記アからエまでの【記述】のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【事例】
甲は,Vに暴行を加えて傷害を負わせ,犯行現場から逃走したが,通りすがりのプロカメラマンWがその犯行を目撃し,携帯していたカメラでそれを写真撮影した。そのため甲の氏名等が判明し,甲は,Vを被害者とする傷害事件で公判請求された。
甲は,第一回公判期日において,「公訴事実記載の日時に現場に行ったことはないし,Vに暴力を振るったこともない。」旨述べて犯行を否認した。
検察官は,その他の証拠とともに,弁護人に開示済みの①本件犯行目撃状況等に関するWの司法警察員に対する供述調書及び②W撮影に係る写真7枚を添付した司法警察員作成の捜査報告書を証拠調べ請求した。
これに対し,甲の弁護人は,前記①及び②の証拠について不同意の意見を述べたが,Wが当時カメラを携帯していた事実については争わない旨述べた。
そこで,検察官は,立証趣旨を「本件犯行目撃状況及び前記写真の撮影状況」として,Wの証人尋問を請求し,裁判所の採用決定を経て,次のとおりWの証人尋問を行った。なお,同証人尋問の段階では,前記②の証拠採用決定及び証拠調べはなされていない。
【Wの証人尋問】
検察官. (ア)あなたは,プロのカメラマンをしていますね。
W. はい。
検察官. あなたは,本件犯行の日時である平成○年○月○日午前○時ころ,どこにいましたか。
W. 仕事に行く途中に,事件の現場を通り掛かりました。
検察官. (イ)その時,あなたは,カメラを携帯していましたね。
W. はい。仕事で必要ですから。
検察官. あなたが現場を通り掛かったとき,何か見ましたか。
W. 後に警察で名前を聞いて知ったVが暴力を振るわれているのを見ました。
検察官. その時,あなたは,どの地点にいましたか。
W. △△交差点の南側の信号機のそばです。
検察官. その時,Vはどこにいましたか。
W. 私がいたところから30メートルほど南側の歩道上で私に背を向けて立っていました。
検察官. (ウ)では,その時,甲はその歩道上のどこにいましたか。
W. Vの正面に立っていました。
(中略)
検察官. あなたは,甲がVに暴力を振るっているのを見て,どうしましたか。
W. とっさに,カメラを取り出して,その様子を写真に撮りました。
検察官. その後,甲はどうしましたか。
W. 私が写真を撮っていることに気付いた様子で,慌てて,車に乗り込み,走り去りました。
検察官. それを見たあなたはどうしましたか。
W. 逃げた犯人を捕まえるのに役立つと思ったので,その車を写真に撮りました。
検察官. (エ)前記②の捜査報告書添付の写真7枚を示します。これらの写真7枚は,あなたが本件現場で撮影したものですか。
W. はい。間違いありません。
(以下省略)
【記述】
ア. この尋問は,主尋問における誘導尋問であるが,証人の身分等で実質的な尋問に入るに先立って明らかにする必要のある準備的な事項に関するものであるので許される。
イ. この尋問は,主尋問における誘導尋問であるので許されない。
ウ. この尋問は,Wが,いまだ甲が現場にいた旨を証言していないのに,甲が現場にいたことを前提としており,誤導尋問と呼ばれる相当でない尋問であるので許されない。
エ. この尋問は,Wに示した写真7枚が,いまだ証拠調べを終えていないものであるので許されない。
1. ア イ
2. ア ウ
3. イ ウ
4. イ エ
5. ウ エ
「平成19年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006373.pdf)をもとに作成