司法試験短答式試験過去問題一問一答

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平成19年 刑事系科目

第27問 (配点: 3)


次のⅠからⅢまでの【見解】は,被告人の特定に関する基準について述べたものである。これらの【見解】のいずれかを前提に,後記【事例】について,検察官から刑の執行猶予の言渡しの取消しを請求された裁判所の採るべき対応として正しいものは 後記1から6までのうちどれか。

【見解】

Ⅰ. 検察官が実際に起訴しようとした者が,だれであるかを基準とする。
Ⅱ. 起訴状に被告人として氏名を表示された者が,だれであるかを基準とする。
Ⅲ. 現に公判廷において被告人として行動した者が,だれであるかを基準とする。

【事例】

甲は,強盗罪で懲役刑の実刑判決を受けて刑務所に服役し,その刑の執行を終えた。その後,甲は,無銭飲食による詐欺事件(①事件)を起こして逮捕勾留されたが,その際,身上等を知る乙の氏名等を詐称したため,検察官は,乙の氏名等を詐称している甲を犯人と考えて,その勾留中に,起訴状の被告人を乙と表示して詐欺罪で起訴した。裁判所は,乙の氏名等を詐称している甲を公判期日に出頭させて審理した上,懲役刑に処するとともに,その刑の執行を猶予する旨の判決を宣告し,同判決は確定した。

さらに,甲は,自動車運転による業務上過失傷害事件(②事件)を起こして身柄不拘束で警察官の取調べを受けたが,その際,身上等を知る丙の氏名等を詐称した。甲から打ち明けられて事情を知った丙が,甲に代わって検察庁に出頭し検察官の取調べを受けたため,検察官は,丙を犯人と考えて,在宅のまま,起訴状の被告人を丙と表示して業務上過失傷害罪で起訴した。裁判所は,丙を公判期日に出頭させて審理した上,禁錮刑に処するとともに,その刑の執行を猶予する旨の判決を宣告し,同判決は確定した。

その後,甲は,窃盗事件を起こして現行犯逮捕され,同事件の逮捕勾留中も身上等を知る丁の氏名を詐称したものの,甲を取り調べた検察官が,その供述内容に不審を抱き捜査を遂げた結果,現在勾留中の被疑者は甲であること,甲は①事件では乙の氏名等を詐称し,②事件では丙の氏名等を詐称していたこと及びいずれの事件の判決の宣告も前記強盗罪の刑の執行を終わった日から5年を経ていなかったことが判明した。このため,検察官は,裁判所に対し,刑法第26条第3号により,甲に執行猶予の必要的取消事由が存することを理由に,①事件及び②事件における刑の執行猶予の言渡しの取消しを請求した。

1. Ⅰの考え方に立てば,①事件は請求を却下し,②事件は執行猶予を取り消すべきである。
2. Ⅰの考え方に立てば,①事件及び②事件とも請求を却下すべきである。
3. Ⅱの考え方に立てば,①事件は執行猶予を取り消し,②事件は請求を却下すべきである。
4. Ⅱの考え方に立てば,①事件及び②事件とも執行猶予を取り消すべきである。
5. Ⅲの考え方に立てば,①事件は執行猶予を取り消し,②事件は請求を却下すべきである。
6. Ⅲの考え方に立てば,①事件及び②事件とも執行猶予を取り消すべきである。

「平成19年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006373.pdf)をもとに作成

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