司法試験短答式試験過去問題一問一答

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平成19年 刑事系科目

第18問 (配点: 2)


次の【事例】に関する後記1から5までの各記述のうち,誤っているものはどれか。

【事例】

自動車を運転していた際に交通事故を起こした甲について,精神鑑定の結果,事故当時,統合失調症に罹患し,心神耗弱の状態にあったとの鑑定意見が出されたが,裁判所は,「被告人が,統合失調症に罹患し,交通事故当時病的体験の出没があったとしても,その職業,社会生活における通常の適応が維持し得,病勢がいまだ被告人の人格,行動を圧倒し,対社会的適応を逸脱しないだけの統覚能力を保持し得る人格状態にあり,しかも,上記事故が被告人のハンドル操作の不適切を過失内容とし,事故自体がその病的体験と直接的あるいは不可避的因果関係があるとは認め難いなどの事情の下においては,被告人は心神喪失ないし心神耗弱の状態にはなく,当該事故に関する業務上過失致死傷罪についての責任能力がある」旨の判断を示した。

1. この裁判所の判断は,この事例における責任能力の判断に当たり,精神の障害という生物学的要素と,弁識能力・制御能力という心理学的要素の両方をともに基準とする混合的方法によることを前提としている。

2. この事例における責任能力の判断方法に対しては,犯行と精神の障害との因果関係が明らかである場合に限って責任能力を否定することになり,心神喪失ないし心神耗弱を認める場合が不当に制限されるおそれがあるとの批判が可能である。

3. この裁判所の判断は,同じ精神の障害の状態にありながら,ある行為については完全な責任能力を認め,他の行為については完全な責任能力を認めないという部分的責任能力を肯定する見解を前提とするものとの評価が可能である。

4. 甲の精神鑑定を行った鑑定人(精神科医)は,甲は統合失調症に罹患し,本件事故当時心神耗弱の状態にあったとの鑑定意見を述べているが,精神科医の鑑定意見と異なるからといって,この裁判所の判断が誤りであるとはいえない。

5. 責任能力については,個々の行為から離れて一般的に判断できる行為者の属性であるとする見解と,個々の行為ごとに個別的に判断できる行為の属性であるとする見解とがあるが,この裁判所の判断は,前者の見解に基づくものと考えられる。

「平成19年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006373.pdf)をもとに作成

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