司法試験短答式試験過去問題一問一答

利用規約プライバシーポリシーご意見・お問い合わせランダム一問一答

平成19年 刑事系科目

第12問 (配点: 2)


因果関係に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。

1. 不作為犯における不作為と結果との間に刑法上の因果関係を認めるためには,不作為の後に結果の発生が認められることで足り,期待される作為をなしていたとすれば結果を避け得たことが合理的な疑いを超える程度に確実であったことまでは必要とされない。

2. 甲がVを殴打したところ,Vには重篤な心臓疾患があったため,その疾患と相まってVが死亡した場合,V自身が同疾患の存在を認識していない限り,甲の殴打とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することはできない。

3. 甲がVの腹部をナイフで突き刺して内臓損傷の重傷を負わせたところ,Vは救急病院に搬送されて緊急手術を受け,術後,いったん容体は安定した。ところが,意識を回復したVが,医師の指示に従わずに暴れたため,治療の効果が失われ,上記内臓損傷により死亡した。この場合,治療の効果が失われたのはVの落ち度によるのであるから,Vの内臓損傷がそれ自体死亡の結果をもたらし得るものであっても,甲の刺突行為とVの死亡の結果との間の因果関係を肯定することはできない。

4. 甲及び乙が木刀と野球のバットでVを執拗に殴打し,辛うじて逃走したVを更に殴打すべく追跡したところ,Vは,追跡を逃れようとビルの屋上に逃げ,更に約1メートル離れた隣のビルの屋上に飛び移ろうとして地上に落下して死亡した場合には,Vは自ら危険な行動を行っている以上,甲及び乙による殴打,追跡とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することはできない。

5. 甲が自動車を運転中,自転車に乗ったVを跳ね飛ばして自動車の屋根に跳ね上げ意識を喪失させたが,Vに気付かないまま自動車の運転を続けるうち,自動車の同乗者がVに気付き,走行中の自動車の屋根からVを引きずり降ろして路上に転倒させた。その結果,Vは頭部に傷害を負って死亡したが,Vの死因である傷害が自動車との衝突の際に生じたものか,路上へ転落した際に生じたものかは不明であった。この場合,同乗者の行為は経験上普通に予想できるところではないから,甲の行為とVの死亡の結果との間に因果関係を肯定することはできない。

「平成19年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006373.pdf)をもとに作成

平成19年 刑事系科目 第12問 (配点: 2) | 司法試験短答式試験過去問題一問一答
このエントリーをはてなブックマークに追加
16 / 58