次の【文章】のアからオまでの( )内には後記【語句群】のaからgまでの語句のいずれか,甲及び乙の《 》内には文章中に記載した①から④までの事情のいずれかが入る。エ及びオに入る適切な語句,甲及び乙に入る適切な事情の組合せとして正しいものは,後記1から8までのうちどれか。なお,アからオまでの( )内には,それぞれ異なる語句が入る。
【文章】
(ア)は,伝聞証拠に当たるが,刑事訴訟法は,供述者が公判期日において証人として尋問を受け,その真正に作成されたものであることを供述したときは,証拠とすることができると定めている。この場合,①供述内容が細かな事実に及ぶことが多いため,記憶に基づく口頭報告よりも書面による記録と報告の方が正確性を期し得ること,②専門的学識に基づく供述として一般的に信用性が高いこと,③宣誓の上行われること,④検察官及び弁護人に立会権が認められていることにより公正さが担保されていること,などの事情が考慮されたものといえる。
最高裁判所は (イ)や(ウ)も,同じ要件の下に証拠能力が認められるとしている。(イ)の場合(ア)について指摘した《甲》と《乙》の事情は当てはまらず,両者の間には(エ)の点で差異があることは否定できないが,刑事訴訟法の明文で(オ)も(ア)と同じ要件の下に証拠能力が認められていることを考慮すれば,最高裁判所の結論も不当とはいえない。しかし,(ウ)の場合には,(ア)と同じ要件の下に証拠能力が認められてよい理由は,主として(ア)について指摘した②の事情が共通することに求めるしかなく,最高裁判所の結論には批判もある。真正に作成されたものであることを供述するとは,内容の正確性についても実質的に反対尋問を受けることと解されていることが,このように緩やかな解釈の背景といえる。
【語句群】
a. 私人が依頼した医師作成の診断書
b. 裁判所又は裁判官が命じた鑑定人作成の鑑定書
c. 捜査機関が嘱託した鑑定受託者作成の鑑定書
d. 捜査機関の検証の結果を記載した調書
e. 裁判所の検証の結果を記載した調書
f. 信用性の情況的保障
g. 必要性
1. エ-f オ-a 甲-① 乙-②
2. エ-f オ-a 甲-③ 乙-④
3. エ-f オ-d 甲-② 乙-③
4. エ-f オ-d 甲-③ 乙-④
5. エ-f オ-c 甲-① 乙-④
6. エ-f オ-e 甲-② 乙-③
7. エ-g オ-c 甲-② 乙-④
8. エ-g オ-e 甲-① 乙-③
「平成18年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006519.pdf)をもとに作成