司法試験短答式試験過去問題一問一答

利用規約プライバシーポリシーご意見・お問い合わせランダム一問一答

平成18年 刑事系科目

第28問 (配点: 3)


後記1から5までの【記述】のうち,次の【判例】(最高裁判所平成13年4月11日第三小法廷決定・刑集55巻3号127頁)と明らかに矛盾するものはどれか。

【判例】

訴因と認定事実とを対比すると,(中略)犯行の態様と結果に実質的な差異がない上,共謀をした共犯者の範囲にも変わりはなく,そのうちのだれが実行行為者であるかという点が異なるのみである。そもそも,殺人罪の共同正犯の訴因としては,その実行行為者がだれであるかが明示されていないからといって,それだけで直ちに訴因の記載として罪となるべき事実の特定に欠けるものとはいえないと考えられるから,訴因において実行行為者が明示された場合にそれと異なる認定をするとしても,審判対象の画定という見地からは,訴因変更が必要となるとはいえないものと解される。とはいえ,実行行為者がだれであるかは,一般的に,被告人の防御にとって重要な事項であるから,当該訴因の成否について争いがある場合等においては,争点の明確化などのため,検察官において実行行為者を明示するのが望ましいということができ,検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上,判決においてそれと実質的に異なる認定をするには,原則として,訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら,実行行為者の明示は,前記のとおり訴因の記載として不可欠な事項ではないから,少なくとも被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし,被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ,かつ,判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には,例外的に,訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではないものと解すべきである。

【記述】

1. 訴因は,裁判所に対し,審判の対象を限定するという機能を有するとともに,被告人に対し,防御の範囲を示すという機能を有する。

2. 刑事訴訟法は,訴因変更の要否の基準を直接に定めていないので,訴因制度の趣旨を踏まえつつ,訴因の果たすべき機能から,その基準を導き出すべきである。

3. 裁判所が,訴因の特定に不可欠な事項について,訴因の記載と実質的に異なる事実を認定しようとする場合には,常に訴因変更手続が必要である。

4. 共謀共同正犯の訴因において,共謀の日時,場所等が明示されていなくても,訴因の特定に欠けるところはないという立場に立ち,上記判例の論理に従えば,検察官が共謀の日時,場所を訴因に明示した場合,判決において,それと実質的に異なる認定をするには,必ずしも訴因変更手続を要しない。

5. 殺人の共同正犯の訴因における実行行為者の記載は,訴因の特定に不可欠な事項ではないが,いったん訴因に明示されると,常に訴因としての拘束力を有する。

「平成18年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006519.pdf)をもとに作成

平成18年 刑事系科目 第28問 (配点: 3) | 司法試験短答式試験過去問題一問一答
このエントリーをはてなブックマークに追加
43 / 66