司法試験短答式試験過去問題一問一答

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平成18年 刑事系科目

第21問 (配点: 2)


次の【文章】は,刑事訴訟法の基本構造と審理・判決の対象との関係について述べた一つの見解である。①から⑧までの( )内に後記【語句群】から適切な語句を入れた場合,組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。なお,同じ語句を2回以上用いてもよい。

【文章】

いわゆる旧刑事訴訟法(大正11年法律第75号。後記昭和23年法律第131号により全面改正。以下「旧法」という。)においても,公訴の提起は検察官の職務であり,検察官が起訴の対象としての犯罪事実を示していた。しかし,旧法は(①)主義の基本構造を採用しており,裁判所には,検察官が起訴状に記載した犯罪事実に限られることなく,これと(②)の同一性のある事実について,起訴状の記載の変更を経ることなく審理・判決する権限と責務があると考えられていた。つまり,起訴状において検察官が示した犯罪事実がそのままの形で審理・判決の対象になるとは限らず,実際に,窃盗の起訴に対して強盗を認定したり,住居侵入の起訴に対して住居侵入・窃盗を認定して,有罪判決をするようなことが行われていた。

これに対し,現行刑事訴訟法(昭和23年法律第131号。以下「現行法」という。)は,(③)主義の基本構造を採用し,訴因の制度を導入した。裁判所には,当事者たる検察官が起訴状に記載した訴因についてのみ,審理・判決する権限と責務があり,起訴状に記載された訴因と(④)の同一性のある事実であっても,検察官が訴因を変更しない限り,裁判所はこれについて審理・判決することはできないと考えられるようになった。実務では,住居侵入・窃盗につき住居侵入の部分を「呑んで」窃盗だけを起訴したり,強盗致傷について傷害が軽微なので単に強盗として起訴するようなことが行われている。これは,(⑤)主義を徹底した現行法の下では,裁判所の認定が検察官の設定した訴因に拘束されて実体的真実との乖離を生じることがあり得ることは,現行法が当然の前提としていると考えられるからである。

裁判所の訴因変更命令に関しては,裁判所にその(⑥)を認めるべき場合があるかどうかが論じられている。裁判所の訴因変更命令は,立証の対象に関する職権行使という点で,立証の過程における職権行使である職権証拠調べと似ているが,職権証拠調べの権限が,真実の解明とともに被告人保護のために用いられるのに対し,訴因変更命令は,特に被告人に利益を与える制度ではないこと,職権証拠調べは当事者の立証活動を排除しないのに対して,訴因変更命令は検察官の設定した審判の対象を修正しようとするものであることからみて,訴因変更命令と現行法の基本構造である(⑦)主義との間には鋭い緊張関係がある。したがって,裁判所に訴因変更命令の(⑧)まで認めるのは適当でない。

【語句群】

a. 起訴状一本
b. 被疑事実
c. 直接
d. 当事者
e. 公訴事実
f. 裁量
g. 口頭
h. 義務
i. 職権

1. ①i③d
2. ①c⑧h
3. ③a④e
4. ⑤g⑥f
5. ④b⑧h

「平成18年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006519.pdf)をもとに作成

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