学生A及びBは、次の【事例】に関して、後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑥までの( )内に後記【語句群】から適切なものを入れた場合、正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。なお、①から⑥までの( )内にはそれぞれ異なるものが入る。
【事例】
甲は、路上において、Vの頭部に暴行を加えた(第1暴行)。その直後、偶然その場を通り掛かった乙は、甲と共謀することなく、Vの頭部に暴行を加えた(第2暴行)。Vは、急性硬膜下血腫の傷害を負い、同傷害に基づき死亡した。第1暴行と第2暴行は、そのいずれもが上記傷害を生じさせることが可能なものであったが、同傷害がいずれの暴行によって生じたのかは不明であった。なお、第2暴行は、少なくとも上記傷害を更に悪化させたものであり、死亡との間の因果関係は肯定できる。
【会話】
学生A.この【事例】では、刑法第207条の適用の可否が問題となりますが、私は、第2暴行とVの死亡との間に因果関係が認められ、(①)ので、同条を適用することが(②)と考えます。
学生B.Aさんの見解に対しては、(③)との批判がありますね。私は、判例と同様に、第1暴行及び第2暴行がそれぞれ(④)を有するものであること及び各暴行が(⑤)ことといった事実関係が証明された以上、Aさんと異なり、同条を適用することが(⑥)と考えます。
【語句群】
a.死亡させた結果について責任を負うべき者がいなくなる不都合を回避するための特例である刑法第207条を適用する前提が欠ける
b.因果的影響を与えていない結果についてまで責任を負わせることになる
c.暴行と実際に発生した傷害との因果関係について検討しないで、直ちに死亡との因果関係を問題にしている点で、暴行と傷害との因果関係が不明であることを要件とする刑法第207条の規定内容に反する
d.できない
e.できる
f.上記傷害を生じさせ得る危険性
g.死亡結果を生じさせ得る危険性
h.黙示の意思連絡があって行われた
i.外形的には共同実行に等しいと評価できるような状況で行われた
1.①a ③c ⑤h
2.①b ③a ⑥e
3.②d ④f ⑤i
4.②e ⑤i ⑥d
5.③c ④g ⑥d
「令和6年 短答式試験 刑法」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/001421189.pdf)をもとに作成