身分犯の共犯に関して、学生A及びBが次の【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑤までの( )内に後記【語句群】から適切な語句を入れた場合、正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。なお、①から⑤までの( )内にはそれぞれ異なる語句が入る。
【会話】
学生A.業務者でも財物の占有者でもない甲が、財物を業務上占有する乙を教唆して当該財物を横領させたという事例について考えてみましょう。
私は、刑法第65条との関係では真正身分犯と不真正身分犯との区別は重要でなく、同条第1項が違法身分の連帯的作用を、同条第2項が責任身分の個別的作用を定めたという見解に立ち、占有者を違法身分、業務者を責任身分と解するので、甲には(①)の教唆犯が成立すると考えます。
学生B.Aさんの見解には、(②)との批判がありますね。
私は、甲に業務上横領罪の教唆犯が成立し、単純横領罪の刑を科すべきと考えます。私は、まず(③)という考え方に立ち、業務上横領罪について(④)と考えて刑法第65条第1項を適用します。その上で、単純横領罪の刑を科すのは(⑤)と考えるからです。
【語句群】
a.業務上横領罪
b.単純横領罪
c.刑法第65条の文言に反する
d.刑法第65条第2項は成立罪名まで個別化する規定である
e.成立する罪名と科刑の分離を回避すべきだ
f.業務者ではない占有者が業務上横領に加功した場合との刑の均衡を図るべきだ
g.刑法第65条第1項が真正身分犯について身分の連帯的作用を、同条第2項が不真正身分犯について身分の個別的作用を定めた規定である
h.不真正身分犯
i.真正身分犯
1.①a ②d ③g ④h ⑤e
2.①a ②f ③e ④i ⑤d
3.①b ②c ③f ④h ⑤e
4.①b ②c ③g ④i ⑤f
5.①b ②e ③d ④h ⑤f
(参照条文)刑法
第65条 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。2 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
「令和5年 短答式試験 刑法」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/001400112.pdf)をもとに作成