司法試験短答式試験過去問題一問一答

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令和2年 刑法

第3問 (配点: 2)


学生A及びBは,過剰防衛に関する次の【事例】について,後記【会話】のとおり議論している。【会話】の中の①から④までの( )内から適切なものを選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

【事例】

Ⅰ.甲は,同じ居室にいた乙が机を押し倒してきたため,反撃として,同机を乙に向けて押し返した。これにより,乙は転倒し,左手中指の腱を断裂した。乙は,机の下敷きになっており,直ちに強い攻撃はできなかったが,体勢を立て直せば間もなく攻撃を再開できる状況であった。甲は,引き続き,防衛の意思で,必要な限度を超えて,乙の顔面を殴ったが,これにより乙に怪我は生じなかった。

Ⅱ.甲は,乙からいきなり殴られ,更に攻撃を加えられそうになったので,反撃として,乙の顔面を殴った。乙は転倒して頭部を地面に打ち付け,意識を失って動かなくなったが,腹が立っていた甲は,引き続き,専ら攻撃の意思で,倒れている乙の胸部を蹴り付け,肋骨骨折を負わせた。その後,乙は,頭部を地面に打ち付けた際に生じた脳内出血が原因で死亡した。

【会話】

学生A. Ⅰの事例で,甲が机を押し返した行為は,急迫不正の侵害に対する反撃だけど,その行為と乙の顔面を殴った行為との関係は,どのように考えるべきだろうか。

学生B.その点は,時間的・場所的な関係や甲の主観面等に照らし,①(a.別個の行為・b.一連一体の行為)と捉えるべきだろう。

学生A.そうすると,甲には,どのような犯罪が成立するだろうか。

学生B.甲には,②(c.過剰防衛としての傷害罪が成立する・d.暴行罪のみが成立する)だろう。

学生A.Ⅱの事例でも,甲が乙の顔面を殴った行為は,急迫不正の侵害に対する反撃であることに変わりないよね。甲には,どのような犯罪が成立するだろうか。

学生B.乙が意識を失って動かなくなっているのに,専ら攻撃の意思で蹴り付けているのだから,顔面を殴る行為と胸部を蹴り付ける行為の間には断絶があると思う。甲には,③(e.過剰防衛としての傷害致死罪が成立する・f.傷害罪のみが成立する)という結論が妥当だろう。

学生A.Ⅱの事例で,B君のように,両暴行の間に断絶があると解すると,④(g.違法性が否定されるべき行為が遡って違法と評価されることになる・h.専ら攻撃の意思で胸部を蹴り付けた場合の方が,防衛の意思で胸部を蹴り付けた場合より軽い罪が成立する)という問題が生じるのではないか。

学生B.その点は,量刑上考慮すれば足りるという説明が可能なのではないか。

1.①a ③e
2.①b ④g
3.②d ③e
4.②c ④g
5.③f ④h

「令和2年 短答式試験 刑法」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/001326055.pdf)をもとに作成

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