司法試験短答式試験過去問題一問一答

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平成30年 刑法

第4問 (配点: 2)


次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。

1.甲は,Aから現金を借り入れるに当たり,借入金をAに自ら返済する意思も能力もないのに,乙に対し,「自分がAに返済するので,保証人として名前を貸してほしい。」とうそを言い,その旨乙を誤信させ,乙に,Aを貸主,甲を借主とする消費貸借契約書の保証人欄に署名押印させた。乙は錯誤に基づいて署名押印しているから,甲には有印私文書偽造罪の間接正犯が成立する。

2.甲は,取引先乙に見せて自己に信用があることを誇示するだけの目的で,偽造された約束手形を真正なものとして乙に提示した。偽造有価証券行使罪の「行使」といえるためには,偽造有価証券を真正なものとして流通に置く必要があるから,甲には同罪は成立しない。

3.甲は,偽名を用いて会社に就職しようと考え,同会社に提出する目的で,履歴書用紙に,架空人Aの氏名を記載し,その氏名の横にAと刻した印鑑を押印するとともに,自己の顔写真を貼り付けて履歴書を作成した。同履歴書の作成名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じさせるものとは認められないから,甲には有印私文書偽造罪は成立しない。

4.甲は,信販会社の財産上の事務処理を誤らせる目的で,権限がないのに,同会社の会員名義のクレジットカードの電磁的記録を白地のカード板の磁気部分に印磁して,クレジットカードを構成する電磁的記録を作成したが,その外観は一般人が真正な支払用カードと誤認する程度のものではなかった。支払用カード電磁的記録不正作出罪が成立するためには,一般人が真正な支払用カードと誤認する程度の外観を備える必要はないから,甲には同罪が成立する。

5.県立高校を中途退学した甲は,父親乙に見せて安心させるだけの目的で,偽造された同高校校長A名義の甲の卒業証書を真正なものとして乙に提示した。甲は,同卒業証書を乙に見せただけであり,公文書に対する公共の信用を害するおそれがないから,甲には偽造有印公文書行使罪は成立しない。

「平成30年 短答式試験 刑法」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/001258878.pdf)をもとに作成

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