司法試験短答式試験過去問題一問一答

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平成29年 刑法

第16問 (配点: 2)


次の【見解】に関する後記アからオまでの各【記述】のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

【見解】

横領罪の目的物は,犯人が占有する他人の物であり,物の給付者において民法上その返還を請求できるものであることを要しないので,不法な目的で金銭を委託した場合,委託者に返還請求権が認められなくても,受託者がこれを領得する行為には,横領罪が成立する。

【記述】

ア.この【見解】に対しては,民法第708条にいう「給付」に「委託」は含まれないとする立場を前提としなければならず,妥当でないとの批判ができる。

イ.この【見解】は,使途を定めて委託された金銭の所有権は受託者に移転しないとする立場と明らかに矛盾するものである。

ウ.この【見解】に対しては,受託者が民法第708条に基づいて委託者からの返還請求を拒む行為にも横領罪が成立することになりかねず,妥当でないとの批判ができる。

エ.この【見解】は,横領罪の保護法益が所有権であることを重視し,委託信任関係の破壊という点を全く考慮していない。

オ.この【見解】に対しては,不法原因給付の目的物の所有権は,給付者において給付した物の返還を請求できないことの反射的効果として,受給者に帰属するに至ったと解すべきであるとする立場を前提とすると,横領罪にいう「他人の物」を領得したわけではないのに受託者に横領罪の成立を認めることになり,妥当でないとの批判ができる。

(参照条文)民法
第708条 不法な原因のために給付をした者は,その給付したものの返還を請求することができない。ただし,不法な原因が受益者についてのみ存したときは,この限りでない。

1.ア エ
2.ア オ
3.イ ウ
4.イ エ
5.ウ オ

「平成29年 短答式試験 刑法」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/001224570.pdf)をもとに作成

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