次の【事例】における【Aの証人尋問】に関して述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【事例】
Aは,平成26年2月3日,司法警察員から職務質問を受け,所持していた覚せい剤を発見されて逮捕された。Aは,同月12日,検察官による取調べにおいて,前記覚せい剤は知人甲から買った旨供述し,その旨記載された検察官調書が作成された。その後,甲に対する捜査が行われ,甲は,Aに対して前記覚せい剤を譲渡した事実で,同年3月2日に起訴されたが,公判において公訴事実を否認した。検察官は,甲の公判において,Aの前記検察官調書の証拠調べを請求したが,弁護人が不同意の意見を述べたので,Aの証人尋問を請求し,次のとおりの証人尋問が実施された。
【Aの証人尋問】
検察官.(ア)あなたは,平成26年2月3日,所持していた覚せい剤を司法警察員に発見されたのですね。
A. はい。
検察官.あなたは,その覚せい剤をどうやって手に入れたのですか。
A. 路上で,見知らぬ人から買いました。
検察官.(イ)知人から買ったのではありませんか。
A. 知人から買ったものではありません。
検察官.あなたは,平成26年2月12日,検察官の取調べを受けた際,誰から覚せい剤を買ったと説明しましたか。
A. 覚えていません。
検察官.(ウ)あなたは,検察官に対し,「甲から覚せい剤を買った。」と説明したのではありませんか。
A. そのように述べたかもしれません。
(中略)
検察官.(エ)(検察官が,Aに,前記検察官調書の署名及び指印部分を示す。)これは,あなたの署名及び指印に間違いありませんか。
A. 間違いありません。
【記述】
ア.下線部(ア)の尋問方法は,誘導尋問に該当するが,甲及びその弁護人が争わないことが明らかであれば,許される。
イ.下線部(イ)の尋問方法は,甲が争う事項に関する誘導尋問に該当するから,許されない。
ウ.下線部(ウ)の尋問方法は,書面を朗読するものであるから,許されない。
エ.下線部(エ)の尋問方法は,記憶を喚起するために供述を録取した書面を示すものであるから,許されない。
オ.検察官が,Aの前記検察官調書を刑事訴訟法第321条第1項第2号に基づき証拠調べ請求した場合,前記検察官調書は,公判でのAの証言よりも検察官の取調べにおける供述を信用すべき特別の情況が存しなければ,証拠能力を有しない。
1.ア イ
2.ア オ
3.イ ウ
4.ウ エ
5.エ オ
「平成26年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000123126.pdf)をもとに作成