司法試験短答式試験過去問題一問一答

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平成25年 刑事系科目

第34問 (配点: 3)


次の【見解】は,実体的には常習特殊窃盗罪を構成する窃盗行為が刑法第235条の窃盗罪(以下「単純窃盗罪」という。)として起訴され(以下「前訴」という。),判決が確定した後,その判決の宣告前に犯されていた余罪の窃盗行為(実体的には確定判決を経由した窃盗行為と共に一つの常習特殊窃盗罪を構成するもの)が,前同様に単純窃盗罪として起訴された場合(以下「後訴」という。)に,前訴の確定判決の一事不再理効が後訴に及ぶかという点に関するものである。後記1から5までの【記述】のうち,【見解】と同じ立場から論じているものはどれか。

【見解】

訴因制度を採用した現行刑事訴訟法の下においては,少なくとも第一次的には訴因が審判の対象であると解されること,犯罪の証明なしとする無罪の確定判決も一事不再理効を有することに加え,常習特殊窃盗罪の性質や一罪を構成する行為の一部起訴も適法になし得ることなどに鑑みると,前訴の訴因と後訴の訴因との間の公訴事実の単一性についての判断は,基本的には,前訴及び後訴の各訴因のみを基準としてこれらを比較対照することにより行うのが相当である。本件においては,前訴及び後訴の訴因が共に単純窃盗罪であって,両訴因を通じて常習性の発露という面は全く訴因として訴訟手続に上程されておらず,両訴因の相互関係を検討するに当たり,常習性の発露という要素を考慮すべき契機は存在しないのであるから,ここに常習特殊窃盗罪による一罪という観点を持ち込むことは,相当でないというべきである。

【記述】

1.単純窃盗として起訴された以上,訴因を動かす権限のない裁判所としては,訴因の範囲において審判すべきである。

2.裁判所は訴因を超えて事実を認定し有罪判決をすることは許されないが,免訴や公訴棄却といった形式裁判をする場合に関する限り訴因に拘束されることはないと解すべきである。

3.両訴因間における公訴事実の単一性の有無を判断するに当たり,いずれの訴因の記載内容にもなっていないところの犯行の常習性という要素について証拠により心証形成をし,両者は常習特殊窃盗として包括的一罪を構成するから公訴事実の単一性を肯定できる場合には,前訴の確定判決の一事不再理効が後訴にも及ぶとすべきである。

4.実体に合わせて訴因が変更されれば免訴となるが,そうでなければ有罪判決になるということになり,検察官の選択によって両極端の結果を生じさせるのは,不合理である。

5.訴因は有罪を求めて検察官により提示された審判の対象であり,訴因を超えて有罪判決をすることは,被告人の防御権を侵害するから許されないが,これに対し,確定判決の有無という訴訟条件の存否は職権調査事項である上,その結果免訴判決がなされても,被告人の防御権を侵害するおそれは全くないから,訴因に拘束力を認める理由も必要性も存しない。

(参照条文)盗犯等の防止及び処分に関する法律
第2条 常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第235条,第236条,第238条若ハ第239条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ窃盗ヲ以テ論ズベキトキハ3年以上,強盗ヲ以テ論ズベキトキハ7年以上ノ有期懲役ニ処ス
一 凶器ヲ携帯シテ犯シタルトキ
二 二人以上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ
三 門戸牆壁等ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰ヲ開キ人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
四 夜間人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅,建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ

「平成25年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000111056.pdf)をもとに作成

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