司法試験短答式試験過去問題一問一答

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平成25年 刑事系科目

第11問 (配点: 2)


次の【事例】及び【判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものはどれか。

【事例】

甲は,手の平で患部をたたいてエネルギーを患者に通すことにより自己治癒力を高めるとの独自の治療を施す特別の能力を有すると称していたが,その能力を信奉していたAから,脳内出血を発症した親族Bの治療を頼まれ,意識障害があり継続的な点滴等の入院治療が必要な状態にあったBを入院中の病院から遠く離れた甲の寄宿先ホテルの部屋に連れてくるようAに指示した上,実際に連れてこられたBの様子を見て,そのままでは死亡する危険があることを認識しながら,上記独自の治療を施すにとどまり,点滴や痰の除去等Bの生命維持に必要な医療措置を受けさせないままBを約1日間放置した結果,Bを痰による気道閉塞に基づく窒息により死亡させた。

【判旨】

甲は,自己の責めに帰すべき事由によりBの生命に具体的な危険を生じさせた上,Bが運び込まれたホテルにおいて,甲を信奉するAから,重篤な状態にあったBに対する手当てを全面的に委ねられた立場にあったものと認められる。その際,甲は,Bの重篤な状態を認識し,これを自らが救命できるとする根拠はなかったのであるから,直ちにBの生命を維持するために必要な医療措置を受けさせる義務を負っていたものというべきである。それにもかかわらず,未必的な殺意をもって,上記医療措置を受けさせないまま放置してBを死亡させた甲には,不作為による殺人罪が成立する。

【記述】

1.Aが甲に対してその特別の能力に基づく治療を行うことを真摯に求めていたという事情があれば,甲にはその治療を行うことについてのみ作為義務が認められるから,この判旨の立場からも殺人罪の成立は否定される。

2.判旨の立場によれば,この事例で甲に患者に対する未必的な殺意が認められなければ,重過失致死罪が成立するにとどまる。

3.判旨は,不作為犯が成立するためには,作為義務違反に加え,既発の状態を積極的に利用する意図が必要であると考えている。

4.判旨は,Aが甲の指示を受けてBを病院から搬出した時点で,甲に殺人罪の実行の着手を認めたものと解される。

5.判旨は,先行行為についての甲の帰責性と甲による引受行為の存在を根拠に,甲のBに対する殺人罪の作為義務を認めたものと解される。

「平成25年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000111056.pdf)をもとに作成

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