Xは,甲土地をA時点とその20年後のB時点のいずれにおいても占有していたから,両時点の間,甲土地の占有を継続し,甲土地を時効取得したと主張して,甲土地の登記名義人であるYに対し,所有権に基づき所有権移転登記手続を求める訴えを提起した。これに対し,Yが甲土地の占有に関して次のア又はイの主張をし,X及びYから他の主張はされなかったものとする。これらア又はイの主張がされた各場合について,Yが請求棄却の判決を得るために裁判官に抱かせることが必要な心証の説明として,後記1から4までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。
ア.A時点ではXが占有していたが,B時点ではYが占有していた。
イ.Xは,A時点でもB時点でも占有していたが,両時点の間のC時点ではYが占有しており,Xは,継続して占有していなかった。
1.Yは,アの主張をする場合にはB時点でYが占有していた事実について,イの主張をする場合にはC時点でYが占有していた事実について,いずれも裁判官に確信を抱かせる必要がある。
2.Yは,アの主張をする場合にはB時点でYが占有していた事実について裁判官に確信を抱かせる必要があるが,イの主張をする場合にはAB両時点の間Xが継続して占有していた事実について裁判官に真偽不明の心証を抱かせれば足りる。
3.Yは,アの主張をする場合にはB時点でXが占有していた事実について裁判官に真偽不明の心証を抱かせれば足りるが,イの主張をする場合にはC時点でYが占有していた事実について裁判官に確信を抱かせる必要がある。
4.Yは,アの主張をする場合にはB時点でXが占有していた事実について,イの主張をする場合にはAB両時点の間Xが継続して占有していた事実について,いずれも裁判官に真偽不明の心証を抱かせれば足りる。
「平成24年 短答式試験 民事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000098333.pdf)をもとに作成