両罰規定に関する次の【見解】A説ないしC説に従って,後記【罰則】の適用に関する後記1から5までの【記述】を検討し,誤っているものを2個選びなさい。
【見解】
A説:両罰規定は,法人が無過失であっても代表者や従業者の責任が法人に転嫁されることを政策的に認めたものである。
B説:法人の代表者の違反行為は法人の違反行為であり,法人の従業者の違反行為については,法人の代表者の当該従業者に対する選任監督上の過失が推定され,過失責任に基づき法人が処罰される。
C説:法人の代表者の違反行為は法人の違反行為であり,法人の従業者の違反行為については,法人の代表者の当該従業者に対する選任監督上の過失が擬制され,過失責任に基づき法人が処罰される。
【罰則】
出入国管理及び難民認定法第73条の2第1項
次の各号のいずれかに該当する者は,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
一 事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた者
二 (以下略)
同法第76条の2
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関して第73条の2(中略)の罪(中略)を犯したときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても,各本条の罰金刑を科する。
【記述】
1.A説によれば,甲社代表取締役乙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場合,甲社に出入国管理及び難民認定法違反の罪(同法第73条の2第1項,第76条の2,以下「不法就労助長罪」という。)が成立する。
2.A説によれば,甲社従業者丙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場合,甲社に不法就労助長罪が成立する。
3.B説によれば,甲社代表取締役乙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場合,甲社の乙に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り,甲社に不法就労助長罪が成立する。
4.B説によれば,甲社従業者丙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場合,甲社代表取締役乙の丙に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り,甲社に不法就労助長罪が成立する。
5.C説によれば,甲社従業者丙が,自社の事業活動に関し,外国人に不法就労活動をさせた場合,甲社代表取締役乙の丙に対する選任監督上の過失がないことが立証されない限り,甲社に不法就労助長罪が成立する。
「平成23年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000073971.pdf)をもとに作成