強盗殺人罪に関する次の【見解】A説ないしC説に従って後記【事例】ⅠないしⅢにおける甲の罪責を検討し,後記1から5までの【記述】のうち,正しいものを2個選びなさい。
【見解】
強盗殺人罪が成立するためには,
A説:殺人行為が強盗の機会に行われなければならないとする。
B説:殺人行為が強盗の手段でなければならないとする。
C説:殺人行為が強盗の手段である場合に限らず,事後強盗(刑法第238条)類似の状況における殺人行為も含むとする。
【事例】
Ⅰ.甲は,強盗の目的で,乙に対し,持っていたナイフを突き付け,「金を出せ。出さなかったら殺す。」などと申し向け,反抗を抑圧された乙から現金を奪い取った後,逃走しようとしたが,乙に追跡され,犯行現場から約10メートル逃げたところで,捕まらないようにするため,殺意をもって乙の胸部を刃物で突き刺し,乙を即死させた。
Ⅱ.甲は,乙所有の自動車1台を窃取し,犯行翌日,同車を犯行場所から約10キロメートル離れた場所で駐車させ,用事を済ませた後,同車に戻ってきたところを乙に発見され,同車を放置して逃走した。甲は,乙に追跡されたので,捕まらないようにするため,殺意をもって乙の胸部を刃物で突き刺し,乙を即死させた。
Ⅲ.甲は,乙方において,乙をロープで縛り上げた上,乙所有の現金を奪い取った後,乙方から逃走しようとしたが,乙方玄関先において,たまたま乙方を訪問した丙と鉢合わせとなり,丙が悲鳴を上げたことから,犯行の発覚を恐れ,殺意をもって丙の胸部を刃物で突き刺し,丙を即死させた。
【記述】
1.A説によれば,事例Ⅰでは強盗殺人罪が成立する。
2.A説によれば,事例Ⅲでは強盗殺人罪は成立しない。
3.B説によれば,事例Ⅱでは強盗殺人罪は成立しない。
4.B説によれば,事例Ⅲでは強盗殺人罪が成立する。
5.C説によれば,事例Ⅱでは強盗殺人罪が成立する。
「平成23年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000073971.pdf)をもとに作成