以下のⅠからⅢまでの【結論】は,次の①から③までの【設問】に関するものであり,後記アからオまでの【記述】は,【結論】を導く根拠又は批判を示したものである。判例の立場を示した組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【設問】
①.犯罪事実に関する証拠が共犯者の自白しかなく,被告人が犯罪事実を否認している場合,被告人を有罪とすることが許されるか。
②.共犯者の自白だけでなく,被告人も犯罪事実を認めている場合,共犯者の自白で被告人の自白を補強して被告人を有罪とすることが許されるか。
③.犯罪事実に関する証拠が共犯者2名の自白しかなく,被告人が犯罪事実を否認している場合,被告人を有罪とすることが許されるか。
【結論】
Ⅰ.①ないし③のいずれの場合も,被告人を有罪とすることが許されない。
Ⅱ.①の場合には,被告人を有罪とすることが許されないが,②と③の場合は,被告人を有罪とすることが許される。
Ⅲ.①ないし③のいずれの場合も,被告人を有罪とすることが許される。
【記述】
ア.憲法第38条第3項が「本人の自白」を唯一の証拠として有罪とすることを禁止しているのは,架空の犯罪事実が被告人本人の自白のみによって認定される危険と弊害を防止するためのものであり,自白の証明力に対する自由心証を制限したものである。
イ.共犯者の供述を証拠とすることの危険性を最大限に重視すべきである。
ウ.共犯者の犯罪事実に関する供述は,その共犯者が被告人本人と共同審理を受けていると否とにかかわらず,被告人本人に対する関係においては,証人の供述と本質を異にするものではない。
エ.他に補強証拠がない場合,自白した共犯者が無罪となり,否認した被告人が有罪となる。
オ.共犯者に対しては反対尋問が可能であり,反対尋問を経ない本人の自白より反対尋問を経た共犯者の自白が証明力が強いのは当然である。
1.Ⅰ-(根拠)イエ -(批判)アウオ
2.Ⅱ-(根拠)イウオ-(批判)アエ
3.Ⅱ-(根拠)アエオ-(批判)イウ
4.Ⅲ-(根拠)イウ -(批判)アエオ
5.Ⅲ-(根拠)アウオ-(批判)イエ
「平成22年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000046903.pdf)をもとに作成