次の1から5までの各記述における甲の罪責を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。
1.甲は,乙が丙の住居及び丁の住居に侵入することを決意しているのを知り,乙に対し,侵入用具としてドライバー1本を貸与し,その翌日,乙はこれを利用して丙の住居及び丁の住居にそれぞれ侵入した。甲には,2個の住居侵入罪の従犯が成立し,両罪は観念的競合となる。
2.甲は,乙方から絵画を盗み,自宅に持ち帰ったが,その後売却先が見付からなかったため,その絵画を破り捨てた。甲には,窃盗罪と器物損壊罪が成立し,両罪は併合罪となる。
3.甲は,自己が経営する店において,1週間のうちに,同店を訪れた複数の客に対し,いずれも同じ題名・内容のわいせつ図画に該当するDVDを数回にわたって販売した。甲には,わいせつ図画販売罪の一罪が成立する。
4.甲は,自己の運転する自動車を脇見運転により通行人乙に衝突させて同人を死亡させた上,慌ててその場から逃走しようとして安全確認を怠って自車をUターンさせたため,折から対向車線を走行してきた丙運転の自動車に自車を衝突させて同人に傷害を負わせた。甲には,自動車運転過失致死罪と自動車運転過失傷害罪が成立し,両罪は観念的競合となる。
5.甲は,郵便局の窓口で,偽造された郵便貯金払戻請求書1通を,不正に入手した他人名義の貯金通帳とともに郵便局員乙に提出して貯金の払戻しを請求し,これを正当な払戻請求と誤信した乙から貯金の払戻しを受けた。甲には,詐欺罪の一罪のみが成立する。
「平成22年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000046903.pdf)をもとに作成