窃盗罪の実行の着手に関する次の1から5までの各記述における甲の行為を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。
1.甲は,乙がズボンのポケットに財布を入れるのを見て,同財布をすり取ろうとして同ポケットに手を差し伸べ,ポケットの外側に触れた。この場合,財布に触っていないので,窃盗罪の実行の着手は認められない。
2.甲は,電柱に架設されている電話線を盗もうと考え,電柱に登って切断用具を電話線に当て,その切断を始めたが,警察官に発見されたため,電話線の被膜を傷付けただけにとどまった。この場合,電話線を切断していなくても,窃盗罪の実行の着手が認められる。
3.甲は,乙所有の自動車を運転して盗み出すため,不正に入手した同自動車のスペアキーを使い,駐車場に駐車してある同自動車の運転席のドアを開けた。この場合,運転席に乗り込む前でも,窃盗罪の実行の着手が認められる。
4.甲は,金品を盗もうと考え,深夜,無人の店舗内において,懐中電灯で真暗な店内を照らしたところ,食品類が積んであることが分かったが,なるべく現金を盗みたいと思い,現金がある精算レジに近づいた。この場合,未だレジ内を物色していないので,窃盗罪の実行の着手は認められない。
5.甲は,不正に取得した乙名義のキャッシュカードを使用して同人の預金口座から現金を引き出そうと考え,同カードを銀行の現金自動預払機に挿入し,暗証番号を入力した。甲は,同カードの正しい暗証番号を知っていたが,その入力を誤ったため払戻しを受けることができなかった場合でも,窃盗罪の実行の着手が認められる。
「平成22年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000046903.pdf)をもとに作成