不作為犯に関する次の1から5までの各記述のうち,誤っているものはどれか。
1.真正不作為犯と不真正不作為犯との違いは,刑罰法規そのものが構成要件要素として明文で不作為を規定しているか否かにある。
2.作為義務を不真正不作為犯の成立要件とすることにより,結果の発生を回避し得る作為をしなかった複数の者の中から不作為犯の主体となり得ない者を除外することができる。
3.不作為とは「一定の作為をしないこと」を意味するから,他人の住居内で居住者から退去要求を受けた場合になすべき「一定の作為」が「住居から退去すること」だとすると,「その住居内に居座ること」も「その住居内で財物を窃取すること」も不作為である。
4.不真正不作為犯を認める見解に対しては,「無から有は生じない」から因果関係が認められないという批判があり得るが,期待された作為を行っていたら結果の発生が避けられたであろうという場合には因果関係が認められるとの反論が可能である。
5.不真正不作為犯の成立要件としての作為義務を認めるためには不作為者が結果発生の原因となる先行行為を行えば足りるとする見解に対しては,故意又は過失によって人に傷害を与えた者が,その後殺意をもってその人を救助せずに放置して死亡させた事案において,不作為による殺人罪が認められる範囲が狭くなり過ぎるとの批判が可能である。
「平成22年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000046903.pdf)をもとに作成