学生A,B及びCが,中止犯の刑の減免(刑法第43条ただし書)の根拠に関する次のアからウまでの【見解】のいずれかを採って,後記【会話】のとおり議論している。A,B及びCが,それぞれどの【見解】を採っているかを検討した場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【見解】
ア.行為者及び将来犯罪を実行するかもしれない国民一般に対して犯罪の中止を奨励することによって法益を侵害から守ることに根拠を求める見解
イ.障害未遂と比べて行為者に対する非難が減少することに根拠を求める見解
ウ.自ら生じさせた危険を自ら消滅させたことにより違法性が減少することに根拠を求める見解
【会話】
学生A.我が国の刑法では,中止犯は犯罪の成立を妨げる事由とはされておらず,刑の減免しか認められていないし,普通,一般人は,中止犯の規定の存在を知らないだろうから,B君の言う根拠は説得力を欠くのではないか。
学生B.A君の見解によれば,真剣な中止行為が行われる限り,結果が発生した場合でも刑の減免を認めるべきことになるはずだ。ところが,刑法第43条の規定によれば,犯罪が既遂に達した場合には中止犯を認めることができないのであって,現行法の立場とは整合しないという問題があるね。
学生C.その上,A君の見解では,中止犯の成立を倫理的に是認し得る動機による場合に限定するのが自然だが,刑法第43条ただし書にはそんな限定はなされていないよ。
学生A.そうは言っても,C君の見解では,被教唆者が中止行為を行ったときに,教唆者にも刑法第43条ただし書の適用があることになるはずだ。しかし,一般に,中止犯の効果は一身専属的なものだと考えられているから,この点についてC君の見解では適切な説明ができないのではないか。
1.Aア Bウ Cイ
2.Aイ Bウ Cア
3.Aイ Bア Cウ
4.Aウ Bア Cイ
5.Aウ Bイ Cア
「平成21年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006453.pdf)をもとに作成