次のⅠ及びⅡの【見解】は,常習一罪などの実体法上一罪の関係にある数個の可罰的行為についての勾留の効力に関する考え方を述べたものである。これらの【見解】のいずれかを前提に,後記【事例】における権利保釈の除外事由に関する判断について述べた後記アからカまでの【記述】のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
【見解】
Ⅰ. 一罪の一部を構成する可罰的行為についての勾留の効力は,起訴の有無にかかわらず,当然に他の部分に及ぶ。
Ⅱ. 一罪の一部を構成する可罰的行為についての勾留の効力は,起訴の有無にかかわらず,他の部分に及ばない。
【事例】
甲は,平成○○年3月10日(a事件)に甲が経理係長として勤務する株式会社V所有の現金100万円を横領したという業務上横領事件で,同年5月1日,逮捕され,引き続き勾留された上,勾留中のまま起訴された。甲には,同年3月12日(b事件)と同年4月15日(c事件)に,同様に株式会社V所有の現金各200万円を横領したという業務上横領の余罪があり,これらの事件はいまだ起訴されていない。
a事件の第一回公判期日前である同年6月1日,甲の弁護人から,保釈請求がなされた。なお,a事件とb事件は包括一罪の関係にあり,これらとc事件は併合罪の関係にある。
【記述】
ア. Ⅰの考え方に立ったとき,a事件に関して,甲が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がなくても,b事件に関して,それがある場合には,権利保釈は認められない。
イ. Ⅰの考え方に立ったとき,a事件に関して,甲が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がなくても,c事件に関して,それがある場合には,権利保釈は認められない。
ウ. Ⅰの考え方に立ったとき,甲が常習としてa事件を犯したものであるか否かを判断するために,c事件の存在を考慮することは許されない。
エ. Ⅱの考え方に立ったとき,a事件に関して,甲が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がなければ,b事件に関して,それがある場合であっても,この点を理由として権利保釈が否定されることはない。
オ. Ⅱの考え方に立ったとき,a事件に関して,甲が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がなければ,c事件に関して,それがある場合であっても,この点を理由として権利保釈が否定されることはない。
カ. Ⅱの考え方に立ったとき,甲が常習としてa事件を犯したものであるか否かを判断するために,b事件の存在を考慮することは許されない。
1. ア ウ カ
2. ア エ オ
3. ア オ カ
4. イ エ オ
5. ウ エ カ
「平成20年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006413.pdf)をもとに作成