司法試験短答式試験過去問題一問一答

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平成20年 刑事系科目

第22問 (配点: 3)


任意捜査と強制捜査の区別に関する次の【記述】の①から⑬までの( )内には,「任意」又は「強制」のいずれかの語句が入る。②,④,⑦及び⑪の( )内に入る語句の組合せとして正しいものは,後記1から6までのうちどれか。

【記述】

刑事訴訟法は,何が強制捜査であるのかについての定義を示していないため,その定義をめぐって学説は分かれており,まず,被疑者の逮捕,捜索差押えのような物理的な実力の行使を伴う捜査が(①)捜査の典型であるとされてきたことから,物理的な実力の行使を伴う場合に限るとする説と,それに加えて人に義務を負わせるものも含むとする説とが対立し,後説が従来の通説であった。そして,いかなる場合が人に義務を負わせるものに当たるかの判断基準については,間接強制を伴う場合に限るという考え方と,義務の履行を強制する手段の有無を問わないという考え方に分かれていた。前者の考え方によると,同法第197条第2項の公務所に対する照会は,(②)捜査,同法第226条の第一回公判期日前の証人尋問は,(③)捜査ということになる。ところが,科学技術の発達が犯罪捜査に応用されるようになると,例えば,通信の当事者のいずれの同意も得ないで電気通信の傍受を行うといった対象者に対する物理的な実力行使や義務付けを伴わない捜査手法が現れてきた。前記各説によると,こうした捜査手法は(④)捜査であることになるが,この結論には大きな疑問がある。また,逆に,例えば,相手方を呼び止めるため,腕に軽く手を掛ける行為のように,物理的な実力が用いられたからといって直ちに(⑤)捜査だとすることが適切か疑わしい場合もある。

その後,物理的な実力によると否とを問わず,個人の権利や法益を侵害するものはすべて(⑥)捜査であるという学説が現れた。この学説によると,街頭で公然と行動している人を写真に撮る捜査は,対象者に「みだりに容ぼうを撮影されない自由」が認められるので,(⑦)捜査に該当することになろう。この学説が物理的な実力の行使あるいは人に義務を負わせるという判断基準から脱却しようとした点は正鵠を射ているが,刑事訴訟法の(⑧)捜査に関する要件や手続はかなり厳格であるので,およそ何らかの権利や利益が侵害されればすべて(⑨)捜査であるというのは妥当ではなく,やはり,そのような厳格な要件や手続によって保護する必要があるほど重要な権利や利益の制約を伴う場合に初めて(⑩)捜査であると考えるべきであろう。こう考えれば,街頭で公然と行動している人を写真に撮る捜査と,住居内の普通では外から見えないような場所にいる人物を高性能の望遠レンズや赤外線フィルムを用いて密かに写真に撮る捜査が,同じ写真撮影でありながら制約される権利や利益の重要性に違いがあるとして,前者を(⑪)捜査,後者を(⑫)捜査とする結論を導くことが可能となり,この結論は常識にも合致する。そして,このように解したとしても,(⑬)捜査は,制約される権利や利益の重要性と当該捜査の必要性・緊急性を比較衡量し,相当と認められる限度でのみ許容されるのであるから,権利や利益の保護に欠けるわけではないのである。

1. ②強制 ④任意 ⑦任意 ⑪任意
2. ②任意 ④任意 ⑦強制 ⑪強制
3. ②強制 ④強制 ⑦任意 ⑪強制
4. ②強制 ④強制 ⑦任意 ⑪任意
5. ②任意 ④任意 ⑦強制 ⑪任意
6. ②任意 ④強制 ⑦強制 ⑪強制

「平成20年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006413.pdf)をもとに作成

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