次の【見解】は,自白の補強証拠が必要とされる範囲について述べたものである。【見解】中の①と②の( )内に入る適切な語句を後記【A群】の1から5までのうちから,また,③と④の( )内に入る適切な記述を後記【B群】の1から5までのうちから,それぞれ一つずつ選びなさい。なお,同じ数字の( )内には,同じ語句又は記述が入るものとする。
【見解】
犯罪を構成する事実は,一般に,客観的要件事実,主観的要件事実,被告人と犯人との同一性の三つに分けることができる。自白の補強証拠が必要とされる範囲について,犯罪を構成する事実のうち(①)の全部又は実行行為を含むその主要部分について補強証拠が必要であるとする学説がある。これは,(①)以外の事実については,自白以外の証拠が存在しない場合が少なくないことも考慮し,明確で実際的な補強の範囲を示そうとしたものといえる。これに対し,判例は,より柔軟に,(①)のうち,(②)を保障する程度の範囲の事実について補強証拠が存在すれば足りるとしている。
例えば,貴金属を客体とする盗品有償譲受けの罪について,被告人の全面的な自白と当該貴金属に関する盗難被害届のみが存在し,自白には十分な信用性が認められる場合,前記学説によれば,(③)ことになる。他方,この場合,判例によれば,(④)ことになる。
【B群】
1. 当該貴金属が盗品であることについて補強証拠に欠けるから,有罪とすることは許されない
2. 被告人が当該貴金属が盗品であることを認識していたことについて補強証拠に欠けるから,有罪とすることは許されない
3. 被告人が犯人であることについて補強証拠に欠けるから,有罪とすることは許されない
4. 被告人が当該貴金属を有償で譲り受けたことについて補強証拠に欠けるから,有罪とすることは許されない
5. 自白全体が架空のものでないとの裏付けがあり,補強証拠に欠けるところはないから,有罪とすることが許される
④
「平成19年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006373.pdf)をもとに作成