次の【見解】ⅠないしⅢに従って,後記の【記述】アないしウについて正誤を検討した場合,後記1から5までのうち,正しいものはどれか。
【見解】
Ⅰ. 行為者が正当防衛に当たる事実があると誤信した場合には故意が否定され,過失犯が成立し得るにとどまる。違法性の意識の有無は故意の成立とは無関係であるが,違法性の意識の可能性がなければ,責任を肯定することはできない。
Ⅱ. 行為者が正当防衛に当たる事実があると誤信した場合には故意が否定され,過失犯が成立し得るにとどまる。違法性の意識は故意の要件であり,違法性の意識が認められない場合には故意が否定される。
Ⅲ. 行為者が正当防衛に当たる事実があると誤信した場合であっても,故意は否定されないが,誤信についてやむを得ない事情があった場合には責任が否定される。違法性の意識の有無は故意の成立とは無関係であるが,違法性の意識の可能性がなければ,責任を肯定することはできない。
【記述】
ア. 行為者は,実際には正当防衛に該当する事実が存在しないのに,これが存在すると誤信した。この誤信にやむを得ない理由があった場合,行為者に犯罪は成立しない。
イ. 行為者は,実際には正当防衛に該当する事実が存在しないのに,これが存在すると誤信した。この誤信が不注意によるものであった場合,行為者に故意犯は成立せず,過失犯が成立し得る。
ウ. 行為者は,事実に関する誤信はなかったものの,正当防衛の成立要件について誤解していたため,正当防衛が成立しないのに,成立すると誤信した。この誤信にやむを得ない理由があったとはいえない場合,行為者に故意犯は成立しない。
1. 【見解】Ⅰに従うと,【記述】アは誤りである。
2. 【見解】Ⅰに従うと,【記述】ウは正しい。
3. 【見解】Ⅱに従うと,【記述】イは誤りである。
4. 【見解】Ⅱに従うと,【記述】ウは正しい。
5. 【見解】Ⅲに従うと,【記述】アは誤りである。
「平成19年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006373.pdf)をもとに作成