司法試験短答式試験過去問題一問一答

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平成18年 刑事系科目

第25問 (配点: 3)


次の【事例】中のアからオまでの下線部分に関して述べた後記【記述】のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

【事例】

甲は,平成○年○月5日午後2時30分,貨物自動車を運転して走行中,進路前方に停止していた乗用自動車の後部に追突し,これに乗車していたVに怪我を負わせる人身事故を起こした。X巡査部長らは,指令を受けて現場に到着したところ,甲の顔が赤く,酒の臭いが強く,身体がふらつき,言葉も乱暴であるなど外見上酒に酔っていることがうかがわれたため,その場で,甲に対し,運転免許証を提示するよう求めるとともに,身体に保有するアルコール濃度を検知するための呼気検査に応じるよう求めたが,甲はいずれも拒否した。そこで,X巡査部長は,同日午後3時,甲に対し,K警察署への任意同行を求め,甲の背中を手の平で押してパトカーの後部座席に乗り込ませ,自分も甲の隣に乗車した上,Y巡査にパトカーの運転を指示し,甲をK警察署に任意同行した。(ア)

X巡査部長は,同日午後4時から,K警察署取調室において甲の取調べを開始し,運転免許証を提示し,呼気検査に応じるよう説得したが,甲はいずれも拒否し続けた上,同日午後5時,「トイレに行かせてもらう。」と言うなり,いすから立ち上がろうとした。X巡査部長は,甲が逃走を図ろうとしたものと思い,甲の左斜め前に立つと,「呼気検査を受けてからでいいではないか。」と告げ,甲の両肩を両手でつかんでいすに座らせた。(イ)

甲が任意に呼気検査に応じる意思はないものと判断されたことから,X巡査部長の上司であるZ警部は,同日午後5時30分,裁判官に対し,甲の血液を採取し身体に保有するアルコール濃度を検知するための鑑定処分許可状及び身体検査令状を請求し,その後,裁判官が発したこれらの令状に基づき甲の血液を採取し鑑定した結果,アルコールが検出された。(ウ)

甲は,アルコールが検出されたことから観念し,運転免許証を提示した上,「飲酒の上運転を開始したところ,酒に酔ったことが原因で居眠りに陥り,このため追突事故を起こした。」旨供述し,X巡査部長が作成した供述調書に署名指印した。(エ)Z警部は,裁判官に対し,飲酒酩酊による居眠りを過失とする業務上過失傷害の罪で甲の逮捕状を請求し,X巡査部長は,同日午後8時,上記請求に対して裁判官が発した逮捕状により甲を通常逮捕した。

Z警部は,同月7日午後2時30分,甲を関係書類とともに検察官に送致する手続をし,検察官は,同日午後3時30分,甲の身柄を受理し,直ちに甲に弁解の機会を与えた上,同月8日午前11時,裁判官に対し,甲の勾留を請求し,裁判官は,同日午後4時,勾留状を発した。(オ)

【記述】

ア. 甲に対する任意同行が適法であるためには,甲の任意の承諾の下,その意思を制圧することなく行われたことを要する。

イ. 任意捜査であるからといって有形力の行使が全く許されないわけではなく,X巡査部長の甲に対する行為が許容される場合もある。

ウ. 被疑者に対する鑑定及び身体検査は,直接強制を許容する規定を欠くため,甲の身体に直接強制を加えて血液を採取することは許されない。

エ. 甲に対する任意同行の時点で実質的な逮捕があったと認定された場合,そのことのみで甲の供述調書の証拠能力は当然に否定される。

オ. 甲に対する実質的な逮捕が任意同行開始の時点になされたと考えても,甲の逮捕後の手続について刑事訴訟法が要求する時間的制限は遵守されている。

1. ア ウ
2. イ エ
3. ウ エ
4. ウ オ
5. エ オ

「平成18年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006519.pdf)をもとに作成

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