[汚職の罪]に関する次の1から5までの各記述のうち,判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
1. 市役所の建築課長甲は,人事異動により同じ市役所の保健課長に転任したが,保健課長に就任した後,建設業者乙から,建築課長当時にその職務に関し有利な取り計らいを受けたことの謝礼として現金30万円を収受した。甲に収賄罪(刑法第197条第1項前段)が成立する。
2. 県知事甲は,近く施行される次期県知事選挙に立候補する決意を固めていたが,任期満了前に,土木業者乙から,再選後に知事が執行する県の公共工事の受発注に当たり有利な取り計らいをしてほしい旨の依頼を受け,その謝礼として現金100万円を収受した。甲に受託収賄罪(刑法第197条第1項後段)は成立しない。
3. 市長甲は,乙から,その長女を市役所の職員に採用してほしい旨の依頼を受け,これを引き受けたが,その謝礼として甲の友人丙に現金300万円を供与するように乙に要求した。乙はその要求どおり丙に300万円を供与したが,丙は賄賂であることを全く知らなかった。甲に第三者供賄罪(刑法第197条の2)は成立しない。
4. 暴力団事件の捜査に従事していた警察官甲は,乙から,同人が所属する暴力団の捜査情報を漏えいしてほしい旨の依頼を受け,その謝礼として現金100万円を収受したが,結局,甲は乙に捜査情報を漏えいしなかった。甲に加重収賄罪(刑法第197条の3第1項)が成立する。
5. 市役所の職員甲は,A税務署職員乙の幼なじみであったが,A税務署管内に居住する丙に依頼され,公務員の地位を離れ単に旧友として,乙に対し,丙の所得税の過少申告を是認する取り計らいをするようにあっせんし,その謝礼として丙から現金100万円を収受した。甲にあっせん収賄罪(刑法第197条の4)が成立する。
「平成18年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006519.pdf)をもとに作成