司法試験短答式試験過去問題一問一答

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平成18年 刑事系科目

第9問 (配点: 2)


学生AとBは,窃盗罪の保護法益について,「所有権その他の本権である。」とする見解と「占有それ自体である。」とする見解のいずれか異なる見解を採り,次の【事例】Ⅰ及びⅡの甲の行為が窃盗罪の構成要件に該当するか否かを議論したところ,学生Aは【事例】ⅠとⅡで結論が異なったが,学生Bは結論が一致した。各見解に関する後記の【記述】1から5までのうち,正しいものはどれか。

【事例】

Ⅰ. 甲は,その所有するカバンを乙に窃取されたが,その数時間後,偶然,街中で乙を見付け,同人からそのカバンを奪った。

Ⅱ. 甲は,乙が所有者丙から賃貸借契約により借り受けているカバンを,乙から奪った。

【記述】

1. 学生Aの採る見解は,Ⅰの事例の甲の行為について,自救行為として違法性が阻却されるから不可罰であると解することになる。これに対し,学生Bの採る見解は,窃盗罪の構成要件該当性を欠くから不可罰であると解することになる。

2. 学生Aの採る見解は,「事実としての財産的秩序」を保護しようとするものである。これに対し,学生Bの採る見解は 「私法上の正当な権利関係」を保護しようとするものである。

3. 学生Aの採る見解は,窃盗罪は「他人の財物」を客体とする犯罪であるから,自己の所有物が窃盗罪の客体となることを定めている刑法第242条は例外を定めた規定であると解することになる。これに対し,学生Bの採る見解は,同条は当然のことを定めた注意的な規定であると解することになる。

4. いずれの見解も,無関係な第三者が窃盗犯人の所持する盗品を奪った場合のその第三者の行為を窃盗罪の構成要件に該当するとするが,学生Aの採る見解が,この結論は,窃盗犯人の占有を侵害したから当然であると解するのに対し,学生Bの採る見解は,この結論は,窃盗犯人が一度侵害した所有者の所有権をその第三者が再度侵害するからであると解することになる。

5. 最高裁判所の判例の考え方は,学生Bの採る見解と異なり,学生Aの採る見解と同じである。

(参照条文)刑法
第242条 自己の財物であっても,他人が占有し,又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは,この章の罪については,他人の財物とみなす。

「平成18年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006519.pdf)をもとに作成

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