文書偽造罪に関する次の【記述】中の①から④までの( )内に,後記の【語句群】から適切な語句を入れた場合,( )内に入るものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。なお,一つの( )内に二つ以上の語句が入る場合もある。
【記述】
「文書偽造の本質は,文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にあると解される。この点に関し,最高裁判所は,『自己の氏名が弁護士甲と同姓同名であることを利用して,[弁護士甲]の名義で,弁護士としての業務に関連して弁護士資格を有する者が作成した形式,内容の文書を作成した所為は,文書の名義人と作成者の人格の同一性にそごを生じさせたものというべきであり,私文書偽造罪に当たる。』旨判断した。この判断は,文書が弁護士としての業務に関連して弁護士が作成した形式,内容のものであることを,人格の同一性にそごが生じているか否かの重要な判断要素の一つとしたものと考えられる。文書が弁護士としての業務に関連して弁護士が作成した形式,内容のものである場合には,その文書を見る者は,その形式,内容から弁護士が作成した文書であることに重きを置いて,弁護士資格を有しない作成者とは別人格の者を名義人だと理解すると思われるからである。このように考えると,(①)のように(②)には文書偽造罪は成立するが,(③)のように(④)には文書偽造罪は成立しないことになる。」
【語句群】
ア. 弁護士資格を有しないAが,高級ホテルに宿泊するに当たり,見えを張るために,宿泊代金等を全額前払するとともに,「弁護士A」の名義で,ホテルに提出する宿泊者カードを作成した場合
イ. 弁護士資格を有しないBが,自己の所有する土地を売却するに当たり,売主欄に「弁護士B」と記載した売買契約書を作成した場合(Bに所有権移転登記や土地の引渡しを免れる意思はなく,実際にこれらを履行したものとする。)
ウ. 弁護士資格を有しないCが,弁護士を装って行った法律相談の報酬を相談者に支払請求するため,「弁護士C」の名義で業務報酬請求書を作成した場合
エ. 弁護士資格を有しないDが,弁護士を装って行った和解交渉の経過について依頼者に報告するため,「弁護士D」の名義で報告書を作成した場合
オ. 肩書が重要な意味を持つ形式,内容の文書を作成した場合
カ. 肩書が特に意味を持たない形式,内容の文書を作成した場合
1. ①イ,エ ②オ ③ア,ウ ④カ
2. ①ウ,エ ②オ ③ア,イ ④カ
3. ①エ ②オ ③ア,イ,ウ ④カ
4. ①エ ②カ ③ア,イ,ウ ④オ
5. ①ア,イ ②カ ③ウ,エ ④オ
「平成18年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006519.pdf)をもとに作成