司法試験短答式試験過去問題一問一答

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令和3年 刑法

第3問 (配点: 3) 備考: 順不同(部分点なし)


次の【事例】及び【判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものを2個選びなさい。

【事例】

Xは,Aに電話を掛け,本来支払う必要のない違約金をAが支払わなければならない旨うそを告げた。Aはうそを見破ったが,警察官から,「だまされたふり作戦」(引き続き犯人側の要求どおりに行動しているふりをして犯人を現行犯逮捕しようとする捜査手法をいう。)に協力することを依頼された。Aはこれに応じ,現金を某所に送付するようにというXの指示に従ったふりをして,現金の代わりに模擬紙幣が入った荷物を同所に向けて発送した。その後,被告人は,Xから,報酬を支払う約束の下に荷物の受領を依頼され,詐欺の被害金を受け取る役割である可能性を認識しつつ,これを引き受け,「だまされたふり作戦」が開始されたことを認識せずに,上記場所で同荷物を受領し,警察官に現行犯逮捕された。

【判旨】

被告人は,本件につき,Xによる欺罔行為がされた後,「だまされたふり作戦」が開始されたことを認識せずに,Xと共謀の上,本件を完遂する上で欺罔行為と一体のものとして予定されていた受領行為に関与している。そうすると,「だまされたふり作戦」の開始の有無にかかわらず,被告人は,その加功前の欺罔行為を含めた本件につき,詐欺未遂罪の共同正犯としての責任を負うと解するのが相当である。

【記述】

1.【判旨】は,被告人に詐欺未遂罪の共同正犯が成立するには,前記荷物の受領行為自体に未遂犯として処罰すべき法益侵害の危険性が必要であり,その危険性の有無は,一般人が認識可能であった事情及び被告人が特に認識した事情に基づいて判断すべきという立場に立った上で,一般人は,Aが「だまされたふり作戦」に協力している事実を認識することが可能であったとの評価を前提としている。

2.【判旨】に対しては,Aがうそを見破っている以上,被告人が関与した時点では,詐欺罪が既遂に至る可能性がなく,被告人が法益侵害の危険性を惹起したとはいえないとの批判が考えられる。

3.【判旨】を前提とした場合,強盗罪における財物奪取行為のみに関与した者には,同罪の共同正犯の成立を認めることはできない。

4.【判旨】は,欺罔行為と財物受領行為の一体性を根拠として,財物受領行為のみに関与した者について,詐欺罪の承継的共同正犯を認めるとの立場と矛盾するものではない。

5.【判旨】によれば,被告人がXのAに対する欺罔行為の内容を認識していても,同欺罔行為を自己の犯罪の手段として積極的に利用する意思がない場合には,詐欺未遂罪の共同正犯の成立が否定される。

「令和3年 短答式試験 刑法」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/001350704.pdf)をもとに作成

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