次の【見解】に従って後記の【事例】及び各【記述】を検討した場合,【事例】よりも逮捕監禁行為と死亡との間の因果関係を肯定する判断に結び付きやすいものは,後記1から5までの各【記述】のうちどれか。
【見解】
因果関係の存否は,行為の危険性が結果に現実化したものと評価できるかどうかで判断すべきであり,その評価に当たっては,介在事情の異常性と結果への寄与度を考慮すべきである。
【事例】
Aは,普通乗用自動車(以下「A車」という。)後部のトランク内にVを押し込み,トランクカバーを閉めて脱出不能にしA車を発進走行させた後,市街地の路上で停車させた。A車の停車場所は,片側1車線のほぼ直線の道路上であった。A車が停車して数分後,後方からXが運転する普通乗用自動車(以下「X車」という。)が走行してきたが,Xは前方不注視(脇見運転)のため,A車の後部に真後ろからX車を追突させた。これによって同トランク内に閉じ込められていたVは傷害を負い,救助が得られないまま同傷害により死亡した。
【記述】
1.上記【事例】において,仮に,A車の停車場所が片側3車線道路の道路端に設けられた路上駐車場であった場合
2.上記【事例】において,仮に,Aが,A車後部のトランク内にVを押し込み,トランクカバーを閉める際に同カバーをVに強く打ち付ける暴行を加えてVに重度の傷害を負わせ,その結果,X車の追突時にはVが既に瀕死状態に陥っており,X車の追突により同傷害が悪化してVの死期が幾分早まった場合
3.上記【事例】において,仮に,Vが,X車の追突直後,通行人の通報により臨場した救急車で病院へ搬送されたが,同病院の医師の重大な医療過誤により死亡した場合
4.上記【事例】において,仮に,Xが,A車後部のトランク内にVが閉じ込められていることを知っており,Vを殺害する目的で,あえてX車をA車に追突させた場合
5.上記【事例】において,仮に,駐車中のA車にX車が追突せず,飛行中のヘリコプターが墜落してA車に衝突し,これによってVが傷害を負って死亡した場合
「平成30年 短答式試験 刑法」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/001258878.pdf)をもとに作成