共犯に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。
1.甲がAの殺害を乙に教唆したところ,乙はAの殺害を丙に教唆し,さらに,丙はAの殺害を丁に教唆し,丁がAを殺害した。甲には,殺人罪の教唆犯が成立する。
2.乙は,路上で,Aの頭部を殴って転倒させ,Aに脳挫傷の傷害を負わせたが,その直後に駆けつけた甲は,Aが乙の暴行によって倒れて苦しんでいることを知り,Aの抵抗が困難になっている状態を利用してAに暴行を加えようと考え,乙と意思を通じ,代わる代わるAの腹部を蹴り,腹部に打撲傷の傷害を負わせた。甲には,脳挫傷の傷害についても乙との傷害罪の共同正犯が成立する。
3.甲は,乙からAの殺害計画を打ち明けられ毒薬の入手を依頼されたことから,毒薬を購入して乙に渡したが,乙は,毒薬での殺害計画を変更し,Aを包丁で刺して殺害した。甲には,殺人予備罪の共同正犯が成立する。
4.甲と乙は,A方に強盗に入ることを計画し,それぞれ包丁を持ってA方に侵入し,Aを包丁で脅した上,室内を物色していたところ,家人B,Cに犯行を目撃され,甲はBに捕まったが,乙は逮捕を免れるためCの腕を包丁で切り付けて傷害を負わせた。甲には,住居侵入罪のほか強盗致傷罪の共同正犯が成立する。
5.暴力団組員乙は,対立する暴力団組長Aを殺害することを決意し,誰にも犯行の決意を打ち明けることなく,小刀を持ってA方に向かったところ,乙の舎弟である甲は,乙の決意を察し,仮に乙がAから反撃されそうになった場合は,自分がAを殺害しようと考え,乙に何も告げることなく,拳銃を持ってA方付近に先回りして隠れていたが,乙は,玄関先に出てきたAを小刀で一突きして殺害した。甲には,乙の殺人罪の従犯が成立する。
「平成28年 短答式試験 刑法」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/001182605.pdf)をもとに作成