次の【事例】に関する1から5までの各【記述】を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。
【事例】
Aは,外国へ旅行に行った際,旅行先で知り合ったBから,荷物を預けるので手荷物として日本まで運んでほしいと依頼され,これを了承し,その荷物を日本に持ち込んだが,荷物の中身は覚せい剤であった。なお,覚せい剤をみだりに日本に持ち込んだ場合には覚せい剤取締法の輸入罪が成立し,麻薬をみだりに日本に持ち込んだ場合には麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪が成立するものとする。
【記述】
1.Aは,Bから預かった荷物の中身は「薬物ではない。」と聞かされていたが,「薬物以外の何か違法なものかもしれない。」と思ってこれを日本に持ち込んだ場合,Aには覚せい剤取締法の輸入罪が成立する。
2.Aは,Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤である。」と思ったものの,覚せい剤を日本に持ち込むことは法律上禁止されていないと考えてこれを日本に持ち込んだ場合,Aには覚せい剤取締法の輸入罪が成立する。
3.Aは,Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤である。」と聞かされたものの,覚せい剤が違法な薬物であることを知らず,「覚せい剤とは高価な化粧品のことである。」と認識してこれを日本に持ち込んだ場合でも,「覚せい剤」という認識がある以上,Aには覚せい剤取締法の輸入罪が成立する。
4.Aは,Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤かもしれないし,もしかしたら麻薬かもしれない。」と思ってこれを日本に持ち込んだ場合,Aには客体の認識に錯誤があり,麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪の法定刑が覚せい剤取締法の輸入罪の法定刑よりも軽いときには,Aには麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪が成立する。
5.Aは,Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤ではないが,麻薬である。」と思ってこれを日本に持ち込んだ場合,覚せい剤取締法の輸入罪の法定刑と麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪の法定刑が同じときには,Aには覚せい剤取締法の輸入罪が成立する。
「平成27年 短答式試験 刑法」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/001144533.pdf)をもとに作成