次のⅠ及びⅡの【見解】は,公判前整理手続において刑事訴訟法第316条の15により証拠開示の対象となる証拠の類型として,「被告人以外の者の供述録取書等であって,検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」を掲げる同条第1項第6号の解釈に関するものである。
「参考人から『・・・』旨聴き取った。」との捜査官の聴取捜査報告書(以下「本件捜査報告書」という。)が存在し,参考人の「・・・」という供述が「検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する」内容のものである場合,この本件捜査報告書が前記の証拠の類型(以下「6号の証拠の類型」という。)に該当するかどうかについて述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,「供述録取書等」とは,「供述書,供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるもの・・・」(同法第316条の14第2号)をいう。
【見解】
Ⅰ.「検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述」は,供述者が直接体験した事実に関する供述に限る。
Ⅱ.「検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述」には,供述者が直接体験した事実に関する供述のほか,供述者が他者から伝聞した供述も含む。
【記述】
ア.本件捜査報告書について,参考人の供述を録取した供述録取書であるとの見方に立ち,Ⅰの【見解】を採るならば,同報告書は,「検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」といえるが,参考人の署名若しくは押印がない場合には「供述録取書等」に当たらないので,6号の証拠の類型に該当しない。
イ.本件捜査報告書について,参考人の供述を録取した供述録取書であるとの見方に立ち,Ⅰの【見解】を採るならば,同報告書は,「検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」といえ,捜査官の署名若しくは押印がある場合には「供述録取書等」に当たるので,6号の証拠の類型に該当する。
ウ.本件捜査報告書について,参考人の供述を聴き取った捜査官の供述書であるとの見方に立ち,Ⅰの【見解】を採るならば,同報告書は,「検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」といえ,捜査官の供述書として「供述録取書等」に当たるから,6号の証拠の類型に該当する。
エ.本件捜査報告書について,参考人の供述を録取した供述録取書であるとの見方に立ち,Ⅱの【見解】を採るならば,同報告書は,「検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」といえず,参考人の署名若しくは押印がない場合には「供述録取書等」にも当たらないので,6号の証拠の類型に該当しない。
オ.本件捜査報告書について,参考人の供述を聴き取った捜査官の供述書であるとの見方に立ち,Ⅱの【見解】を採るならば,同報告書は,「検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」といえ,捜査官の供述書として「供述録取書等」に当たるから,6号の証拠の類型に該当する。
1.ア ウ
2.ア オ
3.イ エ
4.イ オ
5.ウ エ
「平成26年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000123126.pdf)をもとに作成