司法試験短答式試験過去問題一問一答

利用規約プライバシーポリシーご意見・お問い合わせランダム一問一答

平成24年 刑事系科目

第18問 (配点: 3)


次の【事例及び裁判所の判断】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,誤っているものはどれか。

【事例及び裁判所の判断】

被告人ら複数名が,被害者に対し,マンションの居室内において,長時間にわたって激しい暴行を加えたところ,被害者が,隙を見て同居室から逃走した上,被告人らに極度の恐怖感を抱き,その追跡から逃れるため,逃走を開始してから約10分後,上記マンションから約800メートル離れた高速道路内に進入し,疾走してきた自動車に衝突されて死亡したという傷害致死被告事件において,裁判所は,「被害者が逃走しようとして高速道路に進入したことは,危険な行為ではあるが,被害者は,被告人らの激しい暴行を受けて極度の恐怖感を抱き,必死に逃走を図る過程で,とっさにそのような行動を選択したものと認められ,その行動が,被告人らの暴行から逃れる方法として,著しく不自然,不相当であったとはいえない。そうすると,被害者が高速道路に進入して死亡したのは,被告人らの暴行に起因するものと評価することができるから,被告人らの暴行と被害者の死亡との間の因果関係は肯定することができる。」旨の判断を示した。

【記述】

1.この裁判所の考え方によれば,上記事例において,高速道路内に進入する以外に被害者にとって容易にとり得る他の安全な逃走経路があり,そのことを被害者が認識していたにもかかわらず,あえて被害者が高速道路に進入した場合には,因果関係を否定する判断に結び付きやすいといえる。

2.この裁判所の考え方は,被告人らの行為の危険性が現実化したか否かという観点から,逃走した被害者の行動が,被告人らの暴行による心理的・物理的な影響に基づくか否かを検討することによって,因果関係の存否を判断しているものと評価することも可能である。

3.この裁判所の考え方によれば,上記事例において,被告人らが被害者に加えた暴行が短時間かつ軽微なもので,被害者も強い恐怖感を抱かなかった場合には,因果関係を否定する判断に結び付きやすいといえる。

4.この裁判所の考え方は,被告人らの行為と被害者の死亡の結果との間に事実的なつながり(条件関係)が存在することを前提にした上で,被告人らの行為の後に被害者による危険な逃走行為が介在した場合における因果関係の存否を判断していると評価することも可能である。

5.この裁判所の考え方によれば,上記事例において,被害者が暴行を受けたマンションの居室から逃げ出し,同マンションに面した一般道路に慌てて飛び出したところ,自動車に衝突されて死亡したという場合であれば,因果関係を否定する判断に結び付きやすいといえる。

「平成24年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000098334.pdf)をもとに作成

平成24年 刑事系科目 第18問 (配点: 3) | 司法試験短答式試験過去問題一問一答
このエントリーをはてなブックマークに追加
36 / 67