司法試験短答式試験過去問題一問一答

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平成24年 刑事系科目

第3問 (配点: 3) 備考: 順不同(部分点なし)


次の【事例】及び【判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものを2個選びなさい。

【事例】

甲は,自動車内でVにクロロホルムを吸引させて失神させた上,約2キロメートル離れた港までVを運び,自動車ごと海中に転落させて溺死させようという計画の下,Vにクロロホルムを吸引させた。甲は,Vが動かなくなったので,計画どおりVが失神したものと考え,港に運んで自動車ごと海中に転落させた。Vの遺体の司法解剖の結果,甲の計画とは異なり,Vは溺死ではなく,海中への転落前にクロロホルムの吸引により死亡していたことが判明した。【判 旨】甲の殺害計画は,クロロホルムを吸引させてVを失神させた上(以下「第1行為」という。),その失神状態を利用してVを港まで運び,自動車ごと海中に転落させ(以下「第2行為」という。),溺死させるというものであって,第1行為は第2行為を確実かつ容易に行うために必要不可欠なものであったといえること,第1行為に成功した場合,それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存しなかったと認められることや,第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと,第1行為は第2行為に密接な行為であり,甲が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから,その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。

【記述】

1.ダンプカーに女性を引きずり込んで数キロメートル離れた人気のない場所まで連れて行き姦淫しようという計画の下,抵抗する女性をダンプカーに引きずり込んだ上,計画どおり姦淫したが,引きずり込もうとした段階で加えた暴行により同女が負傷したという事例において強姦致傷罪の成立を認める見解は,実行の着手時期に関してこの判旨の考え方と矛盾する。

2.この判旨は,甲がVにクロロホルムを吸引させた場所と殺害計画を実行しようとしていた港との距離が約2キロメートルの距離にあったということを,実行の着手時期を決する上で考慮している。

3.この判旨が第1行為を開始した時点で殺人罪の実行の着手を認めたのは,第1行為自体によってVの死の結果が生じることを甲が認識・認容していたことを前提としている。

4.この判旨の立場に立てば,甲が第1行為によってVが死亡していることに気付き,自動車ごとVを海中に転落させる行為に及ばなかった場合でも,甲に殺人既遂罪が成立する。

5.この判旨の立場に立てば,第1行為を行ってもそれ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存在していたような場合には,甲に殺人未遂罪と重過失致死罪が成立することになる。

「平成24年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000098334.pdf)をもとに作成

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