強盗利得罪(刑法第236条第2項)に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。
1.甲は,乙から,報酬を支払うから丙の腕時計を奪ってきてほしい旨の依頼を受け,丙にけん銃を突き付けて同人の腕時計を奪った後,その報酬として乙から現金を受け取った。この場合,甲には腕時計に関する強盗罪が成立するほか,報酬に関する強盗利得罪が成立する。
2.甲は,飲食店で食事をした後,財布がないことに気付いたため,そのまま逃走しようと企て,店員乙のすきを見て店から出たが,店長丙に見付かって飲食代金を請求されるや,同人の首に登山ナイフを突き付けて同人をひるませた上,その場から逃走して行方をくらませた。この場合,甲には強盗利得罪が成立する。
3.甲は,乙の運転するタクシーに乗車するや,同人の首に出刃包丁を突き付けて行き先を告げ,同所まで乙の意に反してタクシーを走行させた後,タクシー料金を支払わずに逃走して行方をくらませた。この場合,甲には強盗利得罪が成立する。
4.甲は,乙に金銭を貸し付けていたが,返済期限になっても同人が金銭を返済しないため,その居場所を知る丙の首に出刃包丁を突き付けて乙の所在に関する情報を聞き出し,その情報に基づいて乙の居場所を見付け,同人から貸付金の返済を受けた。この場合,甲には強盗利得罪が成立する。
5.甲は,覚せい剤の密売人乙から覚せい剤を受け取った後,その代金を請求されるや,代金支払債務を免れるため,乙を殺害した。この場合,甲には強盗殺人罪が成立する。
「平成21年 短答式試験 刑事系科目」(法務省)(https://www.moj.go.jp/content/000006453.pdf)をもとに作成